激務で毎日辞めたいと思う生活保護ケースワーカーさんが、自分自身を見失わないために伝えたいこと。

メンタルヘルス

役所勤めをする人に対して「最も過酷な仕事を教えてください」と質問すると「生活保護ケースワーカー」を挙げる人は少なくないはずです。 

それだけケースワーカーは激務で過酷で、「安全な生活が保障されない仕事」というイメージが定着しています。

うちの課だけみんなボロボロ。先月も休職者が出て人手不足で毎日遅くまで働いているんですよ。でも、すぐ隣の別の課の人たちはお茶を飲みながらのんびり和やかに働いていて、定時になるとほとんど人がいなくなるんです。本当に見ていて辛くなります。僕はまだ2年目なので、あと1~2年は耐えいないと異動できません。毎日サバイバルですよ。

こんな話は、これまで何度も何度も聞いてきました。このブログにたどり着いたあなたは、「ケースワーカー 辞めたい」「ケースワーカー 激務」などで検索をしていたのではありませんか?

もしあなたがケースワーカーとして過酷な日々を送っているなら、ぜひこのブログを読んでみてほしいです。

ブログ執筆者 AIDERS 代表 山﨑正徳のプロフィールは こちら


過酷なサバイバルを続ける「生活保護ケースワーカーの現実」

私が2017年にAIDERS(エイダーズ)を開業してから、自分でも意外だったことがあります。それは、福祉事務所で働く生活保護ケースワーカーさんから、多くの相談が寄せられたということです。

「疲れていて自分を見失いそう」とセミナーに参加された方

「退職するかどうか悩んでいる」とカウンセリングで相談された方

「自助グループのような場所を探していた」と検索から対人援助職の自助グループに申し込まれた方、などなど

皆さんの話を聞いて私が感じたことは、あれだけ大変で過酷な仕事であるにも関わらず、上司や同僚同士で「お互いに燃え尽きないように支え合う」という環境が整っていないのだな、ということでした。

私はクリニックや病院での仕事を通して生活保護ケースワーカーの方と連携することが多かったので、その過酷さ、ストレスは相当なものだろうと理解してきました。

  • とにかく激務。日中は受給者への対応でろくに休憩をとる時間もない。タイムマネジメントなんて一切できない。役所が閉まってから、ようやく自分の仕事にとりかかれる。
  • 忙しいのに毎日電話をかけてきて、なかなか電話を切らせてくれない受給者に時間を奪われる。
  • 受給者から恨まれたり、罵倒されたりすることもある。
  • 病院や施設など、関係機関から「退院時に迎えにきてください」「家庭訪問してください」などと対応を求められ、忙しいのに丸一日つぶれてしまうことがある。でも、対応しないと「福祉は何もやらない!」と悪者にされてしまう。
  • 家に帰っても仕事のことが頭から離れず、休日も思い出して嫌な気持ちになることが多い。
  • 体調は常に悪い。たまには友達と飲みに行きたくても、翌日の仕事のことを考えると早く帰って寝たい。
  • 同僚や上司、それぞれが自己流で、福祉事務所としてのスタンダードの対応や方針を教えられる人がいない。どこまでやるべきなのかが定かでなく、自分で判断しないといけないので毎回不安。
  • 辞めたいと思うことはいつもだけど、公務員を辞める決断は簡単ではない。

これらは実際に生活保護ケースワーカーさんから聞いた話です。 

京都府向日市のケースワーカーと生活保護受給者による死体遺棄事件はなぜ起きたのか。「過酷な職場環境と事件の関係性」を紐解く。
2019年6月、京都の向日市で、生活保護ケースワーカーが生活保護受給者と共に死体を遺棄するという衝撃的な事件が起きました。この事件について、複数の援助職の方から「ブログに書いてほしい」というお話をいただきましたので、「生活保護ケースワーカー...

「割り切らないと回せない」ことで生じる福祉職としての強い葛藤

まだまだたくさん辛いことはあるでしょう。

毎日必死で、まさに「サバイバル」。今日一日が無事に終わるか。ちゃんとやれるか。明日のことなんて考える余裕は、ほとんどないとうのが現実でしょう。

生活保護ケースワーカーの中でも、とくに葛藤が強くなるのは福祉職として採用された方ではないでしょうか。(もちろん、一般事務職の方も相当なストレスだと思います)

なぜなら、「割り切ることがとても難しい」からです。

あれだけケースの数が多いと、ひとつひとつにじっくりと向き合うというより、事務的な対応をして効率よく裁いていかないと仕事が回らないはずです。

もっと話を聴いてほしそうな受給者の話を遮って、話を終えなければいけない時もある。なんとか助けてあげたいなと思う受給者がいても、一人にそこまで時間をかけられないので、どうしても十分なサポートができないことなんて日常でしょう。

福祉的なアプローチよりも、事務的な対応を磨いて、割り切らないと回せないのが現実です。当然ながら、福祉職はそこを割り切るのが難しいのです。

私の印象ですが、役所の福祉職の方は、とにかく優しい人が多いです。穏やかで、自分の気持ちよりも相手の気持ちを優先する献身的な方。

困っている人がいれば少しでも力になりたいと思う方。手を抜くことが苦手な真面目な方。

そんな方たちが、効率を優先して、情に流されずに割り切って働かなければならないのですから、これは「福祉職としてのアイデンティティ崩壊の危機」にもなり得ます。


教育もノウハウの蓄積もなく、サポートも乏しい。よって燃え尽きが量産される。

目の前の仕事に毎日追われ、求められるのは「対応の質」ではなくて「対応の量とスピード」。

上司や先輩からのアドバイスと言えば、「早く慣れないとね」といった漠然としたものばかり。こんな毎日を1年も続ければ、燃え尽きてしまうのは、とてもノーマルな反応なのではないかと感じます。

仕事中も家でも、気づくと涙が出ていることがあるんです。なんで泣いているのか、自分でもよくわかっていません。ただただ疲れていて、朝になったら無理やり体を起こして、毎日毎日必死に職場に行って。ただそれだけです。

こんなふうに、過労状態が当たり前で、「自分が今どんな状態なのか」、その感覚すら麻痺してしまっている人にも多く出会いました。

日々戦場にいて、疲弊した状態が普通になるわけですから、自分の健康状態を正確に判断することは困難になるでしょう。

そして、疲れ果てたケースワーカーさんが、なぜ私のセミナーやカウンセリングに辿り着くのか。それは冒頭にも書きましたが、職場の中でのサポートがあまりにも乏しいからだと感じます。

基本的に若いスタッフが中心で、ノウハウの蓄積もないように思いますし、教育もないところが多い。

「福祉事務所の仕事は大変だ」「若手であれば通る道」の一言で終わらせているのではないでしょうか?「ここにくればこれが普通」「慣れるしかない」しか言えないのではないでしょうか。

「辛い」「苦しい」「辞めたい」といった気持ちをサポートしてあげられていないから、最後は抜け殻のように燃え尽きるのではないかな、というのが私の印象です。

このブログに辿り着いた生活保護ケースワーカーのあなたは、十分にがんばっています。

自分で自分をそう思えないのだとしたら、日々の過酷な業務により、自尊心が低下しているのかもしれません。どれだけ身を粉にしてがんばって働いても報われないと、人としての存在意義を見失い、自信が下がりやすくなります。

「私なんてだめだ」「きっと何をやってもうまくいかない」

こんなふうに毎日自分を責めてしまっていませんか。自分のことを見失っていませんか。孤立していませんか。

もしそうであれば、少しだけ足を止めて、自分を振り返る時間を持ってほしいなと思います。私の方でもぜひ直接支援をさせていただきたいので、おひとりで抱え込まず、お気軽にカウンセリングにお申込みください。

最後に、お悩み別にお役に立てそうなブログ記事をご案内しますので、ぜひ読んでみていただきたいです。

ストレスに強くなりたい人に読んでほしいブログ記事

メンタルヘルス問題で休職をすることになった人に読んでほしいブログ記事

人間関係の距離感が上手につかめずに疲れてしまう人に読んでほしいブログ記事

退職するかどうかを真剣に悩んでいる人に読んでほしいブログ記事

AIDERS 代表 山﨑正徳

公認心理師・精神保健福祉士。精神科・EAP機関・カウンセリングルーム・学校などで、2万件以上の相談を受けてきたカウンセラー。自身の燃え尽き・離職等の経験から、対人援助職のメンタルヘルスを向上させることを目的にAIDERS(エイダーズ)を開業。これまで、延べ3000人以上の対人援助職に対してバウンダリーやクレーマー対応などをテーマに講演を行っている。

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