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「泣かれるのが怖くて指導できない…」すぐ泣く新人看護師への適切な対応方法。

職員の問題行動への対応方法

すぐに泣いてしまう新人看護師への対応で困っています…。

新人看護師が泣くこと自体は、決して珍しいことではないんです。でも、今回の子はもう半年くらいかな?指導をしないといけない場面だったり、仕事がうまくいかなかったりすると、そのたびに泣いてしまうんです。そうなるともう、肝心の話を最後まで聞いてもらうことすらできず、指導にならないんです。

私だけでなく、他のスタッフも同じように『指導しようとして泣かれる』経験をしています。現場はみんな彼女に気を遣い、腫れ物に触るような対応で疲弊しています。

本人は普段、至って普通です。メンタルヘルス問題とか心配して尋ねても否定しますし、泣かれると困る旨を伝えると『ミスをしなくなれば大丈夫です』『頑張ります』と前向きな返答はあります。

ですが、現実は何も変わりません。指導のたびに泣かれてしまうこの状況、一体どうすればよいのでしょうか。

ただでさえ忙しい現場のなか、こうした対応に追われるのは本当に大変なことだと思います。

新人看護師の大変さを十分に理解しているからこそ、細心の注意を払い、成長を心から願って向き合ってきたはずです。

それにもかかわらず、半年経っても状況が変わらず、見通しが立たないというのは本当につらいですよね。

現場のスタッフも皆、「どう接するのが正解なのか」と正解が見えない問いに戸惑い、疲れ果てているのではないでしょうか。

このブログでは、こうした「指導のたびに泣いてしまう看護師」に対し、どのように向き合い、具体的にどう対応すべきかを詳しく解説していきます。


その対応は「マネジメント」か「ケース対応」か。対人援助の管理職が陥る罠

看護師などの対人援助職にある管理職が、この問題で悩み続けてしまうのには理由があります。

目の前で泣いている新人を見たとき、管理職としての役割よりも、無意識に「援助職」としての本能が勝ってしまうからです。

マネジメントをすべき場面で、「どうすればこの子は泣かなくなるだろうか」「どう関われば傷つかないだろうか」と、まるで患者さんに対するような「ケース対応」をしてしまうのです。

しかし、管理職の役割は相手をケアすることではなく、組織の業務を円滑に回し、パフォーマンスを上げることです。

指導者が相手の泣き止ませ方を必死に考えている状態は、本来本人が負うべき「感情コントロール」という責任を、指導者が肩代わりしてしまっている状態と言えます。

今、あなたの目の前で部下が泣いている。

「かわいそうだな」「力になりたいな」

その気持ちはとても大切なものです。

ただ、あなたの部下に対する立場は「管理職」であって「援助職」ではありません。

まずこの原則を押さえましょう。


なぜ「指導で泣かれる」と困るのか?

「指導中に泣かれて困っている」という相談は、これまでに何度か受けたことがありますが、印象として「職場が具体的に何に困っているのか」という点が整理しきれていないケースが少なくありません。

あなた自身のケースではどうでしょうか。

ポイントは、「泣かれて困る」や「甘えないでほしい」といった感情論ではなく、「通常の業務を行う上で、現実的にどのような支障が出ているか」というパフォーマンスの問題を切り口に整理することです。

これは状況によってもちろんケースバイケースですが、今回の場合は非常に明白ですよね。

整理すべきは、主に以下の3点です。

  1. 必要な教育ができない。
    泣かれることで話が中断し、伝えるべき知識や技術などの共有がストップしてしまう。
  2. 安全な指導環境が損なわれる。
    「腫れ物に触る」ような空気になり、指導が必要な場面に「即座に確実に指導すること」が困難になる。
  3. 職場の秩序を乱す。
    感情のコントロールができないことで、周囲に迷惑をかけて心理的負担を強いる。職場の規律やチームの士気の低下につながる。

職場として改善すべきなのは、これらのパフォーマンスの問題です。

だからこそ、ただ感情的に「泣かないで」と諭すのではなく、「今、何が支障になっており、職場として何を改善してほしいのか」を客観的な事実として伝え、改善を求める必要があるのです。

「泣かないで」は家族の距離感、「パフォーマンスの改善」はプロの距離感

「泣かないで」という声掛けが悪いとは言いませんが、毎回そのような声掛けを続けてしまうと、いつの間にやら家族や友人のような「境界線の緩い私的な関係」になりやすいため注意が必要です。

実際、看護や介護の現場では、上司部下(教育担当者と新人)がまるで親子のような親密な関係になってしまいトラブルに発展するケースも珍しくありません。

「泣かないで」は、相手の善意や感情に配慮した「お願い」に近いニュアンスを含んでいます。

これが続くと、以下のような弊害が生まれやすくなります。

  • 指導者の疲弊
    指導のたびになだめ役まで引き受けて時間とエネルギーを奪われる。人によっては「また泣かせてしまった…」「私が悪いのでは?」と自分を責めてしまいストレスが増加する。
  • 新人の「指導者への依存」と「停滞」
    「泣いても許される」という環境についつい慣れてしまう(依存してしまう)ことがあり、いつまでも「感情のコントロールの問題」に向き合うことができない。

つまり、境界線が緩むことで、結果としてお互いにとって負担の高い、依存的な関係になることがあります。

だからこそ、職場は正しい距離感を保つために、常に「パフォーマンスの問題」を切り口に扱うこと。

それは冷たさではなく、新人を一人の自立したプロとして尊重するための「必要な一線」となります。

※ついつい巻き込まれて依存的な関係になりやすいという方は、以下のブログを参考に、バウンダリー(境界線)を切り口に自己理解を深めてみてください。

『指導が必要な場面で泣いてしまう』という状態が続くことで、仕事に支障が出ています。泣いてしまうと必要な教育が途中で止まりますし、周りも気を使って即座に指導ができなくなってしまいます。それは職場の秩序を乱すことにもつながることになるので、これを改善してもらう必要があります。

だから、冷静に指導を受けられるようになること、感情をコントロールできるようになることを目標に取り組んでください。

このようなイメージで、職場として何に困っているのかを整理して、パフォーマンスの問題として伝えましょう。

「ミスをしなければいい」という誤解を解く。

はい、本当に申し訳ありません…。なかなか覚えられない自分が情けなくて…。でも、一日も早く仕事を完ぺきに覚えれば、皆さんに迷惑をかけるミスもなくなって、泣かずに済むと思うんです。 だから、もっと必死に頑張ります!

このように言われると、「仕事に慣れて泣かなくなるまで、こちらが待つしかないのかな」と、指導する側は考えがちです。

しかし、実はこの時点で、本人が無意識に作り出した「問題のすり替え」に巻き込まれてしまっている可能性があります。

もちろん、本人に悪気はないでしょう。「次はミスをしないように頑張ります!」「できるようになれば大丈夫です!」と精神論で必死に自分を奮い立たせようとしているケースはとても多いです。

ただ、ここで一度立ち止まって整理する必要があります。

大切なのは、「仕事ができるようになるまで待つ」ことではありません。

なぜなら、仕事ができるようになっても、指導を受ける場面は必ず訪れるからです。

どれほど成長しても、新しい業務や予期せぬトラブルがあれば、周囲からの指摘や指導は不可欠です。

そのたびに「泣いてしまって話ができない」という状態が続くのであれば、言うまでもなく仕事にはならないですよね。

「頑張ります」という本人の意欲を否定する必要はありません。

ただ、その意欲の方向を「ミスをしないこと」だけでなく、「たとえミスをしても、冷静に指導を受けられる状態を整えること」に向けてもらうことが大切なのです。

気持ちはとても良くわかるんだけど、問題は「ミス」ではありません。新人ならできなくて当たり前だし、それは誰だって通る道ですからね…。

仕事がうまくいかない場面はこれから先もずっとあるし、指摘を受けることも続くと思う。だから、「仕事に慣れれば大丈夫」ではなくて「うまくいかない時も落ち着いて指導を受けられるように感情をコントロールできるようになること」が必要です。

ミスを減らすことだけではなくて、感情のコントロールを課題として取り組んでもらいたいのです。

試してみてほしい質問技法

ただ「泣かれたら困る」と伝えるだけでは、相手は「すみません」と謝るしかなく、やり取りが深まりません。

本人が自分で考えて答えを出す「問いかけ」をすることで、改善に向けた責任と行動を明確にできます。

具体的には、以下のような質問を投げかけてみてください。

・どうすれば泣かずに指導を受けられると思いますか?
・改善するために、自分で取り組めることはありますか?
・そのために、職場からどのようなサポートがあると助かりますか?

この際、新人が「仕事を覚えれば泣かずに済みます」と問題をすり替えてきたとしても、巻き込まれないように注意しましょう。

あくまで課題は「感情のコントロール」です。

「感情をコントロールするために取り組めそうなこと」や「そのための職場のサポート」を軸に話を進めてください。

回答は「頑張ります」といった抽象的なものではなく、なるべく具体的な行動に落とし込んでもらうことがポイントです。

そして、こちらが感情的になってしまうと、ただ相手を追い詰めるだけのコミュニケーションになってしまいます。

あくまで穏やかに、対等な対話を心がけてみてください。

毎回同じやり取りが続いてしまっている方は、ぜひこの突破口を試してみてほしいと思います。

「泣かない努力」が実らないなら、専門家へつなぐ

「泣くことをコントロールできない」という問題は、本人の性格ではなく、「感情コントロール」の問題です。

本人の「泣かないように頑張ります」という言葉を尊重することは大切ですが、職場としての許容範囲には当然ながら限界があります。

「この状況を職場としていつまで許容するのか」というという明確な線引きが必要です。

それでは、来月また面談しましょう。

それまでに今の状況が変わっていなければ、職場としては、改善のために産業医やカウンセリングといった専門家に相談してもらうことを考えています。

このような具体的な提案をしましょう。以下のブログ記事を参考にしてください。

これはパワハラのケースで考えれば分かりやすいはずです。

怒りを制御できずパワハラを繰り返す人が「次は怒らないように自分でコントロールします」と言ったとしても、改善が見られないのであれば、職場は「精神科を受診する」「カウンセリングを受ける」といった専門的な対策を講じるよう求めます。

感情の暴走によって仕事に支障が出ている以上、それを専門的なアプローチで改善しようと努力することは、職員としての義務でもあります。

職場に産業医やカウンセラーがいれば必ず相談を促し、専門家の見解に沿った対応をしていく必要があります。

「頑張り」を待つだけではなく、改善のための具体的なリソースを提示して促すことが、職場としての正しい対応なのです。

最新セミナー日程

AIDERS 代表 山﨑正徳

公認心理師・精神保健福祉士。精神科・EAP機関・カウンセリングルーム・学校などで、2万件以上の相談を受けてきたカウンセラー。自身の燃え尽き・離職等の経験から、対人援助職のメンタルヘルスを向上させることを目的にAIDERS(エイダーズ)を開業。これまで、延べ4000人以上の対人援助職に対してバウンダリーやクレーマー対応などをテーマに講演を行っている。

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