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介護現場必見 | わがままなシフト希望に困り果てる管理者のための「職場の境界線」の引き方

バウンダリー(境界線)

私は介護事業所の管理者を務めています。

悩みは、毎月のシフト作成がとてもストレスで疲れていることです。

前の管理者がだいぶ変わった人で、スタッフのシフト希望をほぼ無視するので、現場には不満が溜まっていたんです。

だから私に代わってからは、「少しでも働きやすい職場にしたい」と思って、できるだけシフト希望に応えるようにしたんです。最初はみんな、すごく喜んでくれました。「助かります!」って感謝もされました。

みんなが喜ぶから、私もパズルのような調整を必死にこなしてきました。でも、半年を過ぎたあたりからでしょうか。なんだか空気が変わってきたんです。あんなに喜んでくれていたはずなのに、今では希望が通って当たり前?的な空気になってきて…。

むしろ希望が通らないと、「どうしてダメなんですか?」と不満を直接ぶつけられることもあります。特に困っているのが、ある一人の女性スタッフです。

いくつも細かく希望を出してくるようになりました。どうしても調整がつかずにお願いに行くと、あからさまに不機嫌になるんです。影では「今回のシフト、納得いかない」「えこひいき」しているとか、周りに言いふらしているという噂も耳にしました。

良かれと思って始めたシフト希望が、今では私の一番のストレスになっています。スタッフの顔色を伺いながらシフトを作る毎日に、もう限界を感じています。私は、どうすればよいのでしょうか…。

このように、スタッフを大切にしたいという思いから、パズルのようなシフト調整を必死にこなしている管理職の方は本当に多いものです。

私も長くシフト作成に携わってきましたが、毎月パズルのような表を前にため息をつく……

あの作業は、本当に心が折れそうになりました。

「みんなに気持ちよく働いてもらいたい」

そのようなあなたの純粋な思いは、本来とても素晴らしいものです。

「自分が少しがんばって調整すれば、みんなが喜んでくれるはずだ」

そのように考えて、これまで尽力されてきたのでしょう。

まさにその献身的な努力があったからこそ、現場が守られてきたのだと思います。

しかし、職場のためにと希望に応え続けた結果が、今のストレスフルな状況だとしたら、あまりに報われません。

おそらく、スタッフの希望を優先するあまり、ご自身の希望は後回しになり、人手が足りない枠は自ら入ってカバーされているのではないでしょうか。

それにもかかわらず不満をぶつけられるというのは、なおさら苦しいことです。

では、なぜあなたの「優しさ」が、このような「おかしな関係」を招いてしまったのでしょうか。

ここからは、関係性が崩れてしまったメカニズムの解説も含め、これからどのように「職場の境界線」を引き直していけばよいのか、具体的な対応方法についてお話ししていきます。

ブログ執筆者 AIDERS 代表 山﨑正徳のプロフィールは こちら


「シフト希望」の本来の定義を確認する。

まず確認しておきたいのは、職場における「シフト希望」という制度が、どのような関係性の上に成り立っているのかという点です。

大前提として、シフト希望はスタッフの「権利」ではなく、職場側の「配慮」にほかなりません。

本来、シフト制の職場における雇用契約とは、事業所が指定した時間に労働力を提供するという合意です。

「絶対にこの日に休みたい」という希望があるならば、法的に認められた権利である「有給休暇」を取得するのが本来の形なのです。

ただ、シフト希望で苦戦している管理職の話を聞くと、このシフト希望の本来の定義そのものが揺らいでいるケースが少なくありません。

つまり、「職場の配慮」がいつの間にか「スタッフの既得権益」へとすり替わってしまう、おかしな関係に陥っています。


「シフト希望」が機能するための安全な関係性とは。

では、善意や配慮としての「シフト希望」が成立する、本来あるべき「安全な関係性」とはどのようなものかを考えてみましょう。

一言でいえば、それはお互いがお互いを尊重し、適切な境界線が保たれている関係です。

「シフト希望はあくまで『希望』であって、必ず通るものではない」という共通認識をスタッフ側が持っていること。

そして、希望が叶ったときに「調整してもらえて助かった、ありがとうございます!」と自然に思えること。


これが大前提です。

当たり前のことですが、希望を聞くにしても職場には「限界」があります。

この限界をスタッフが理解し、尊重があるからこそ、職場も「できる限りの配慮をしてあげたい」という気持ちが自然と湧いてくるのです。

これこそが、シフト希望という制度が健全に機能するための「安全な人間関係の土台」です。


「善意」が「依存」に変わるとき――機能不全の関係性

一方で、今あなたが苦しんでいるスタッフとの関係は、どのような状態なのでしょうか。

それは、あなたの「善意」や「配慮」が、スタッフ側の「依存」にすり替わってしまった状態です。

この関係性は、ある日突然できあがるものではありません。

時間をかけて、徐々に、じわじわと形成されていくことがほとんどです。

最初は小さな「お願い」だったものが、いつの間にか「当たり前」になり、気づいたときにはあなたが相手の顔色をうかがうようになっている。

「あれ、なんだかおかしいな……」「最近、シフトを作るのがやけに苦しいな……」

そんな違和感を抱えながらも、「波風を立てたくない」「説明するのが面倒」「この日は自分が出ればなんとかなる」など、自分を後回しにして調整を続けてきたのではないでしょうか。

不満が生じないように、前向きに働いてもらえるように。職場が平和で、そして自分が平穏でいられるように。

ただ、残念ながらあなたがそのように振舞うことで、ますますあなたの善意に依存され、要求が増してしまう関係があるのです。

「いつかわかってくれるはず」と期待しても、このようなケースでは相手は簡単には変わりません。

むしろ、あなたが自分を犠牲にして調整を頑張れば頑張るほど、「不満を言えば自分の要求が通るのだ」と学んでしまい、より行動をエスカレートさせてしまう。

今まさに、あなたの職場で起きていることではないでしょうか。

まずは今の現実と向き合い、生じている境界線の歪みを理解しましょう。


境界線を引き直す:管理職としての「毅然とした再定義」

では、歪んでしまった境界線をどう整えていけばよいのでしょうか。

もし、職場全体でシフト希望への要求が過多になり、モラルや秩序が低下しているのなら、まずは管理職から「シフト希望の定義とあり方」を全体へ明確に打ち出す必要があります。

伝えるべきことは、非常にシンプルです。

「シフト希望は権利ではなく、職場の配慮である」ということ。

そして「その配慮は、スタッフ全員の理解と協力という土台があって初めて成り立つものである」ということです。


ここで大切なのは、言葉を濁さないことです。

時には、「この前提が守られないのであれば、職場としての秩序を維持するために、シフト希望という仕組みそのものを見直さざるを得ない」という、強いメッセージを発することも必要です。

これは決してスタッフを突き放すためのものではありません。

「善意」を「依存」の対象にさせない、つまり、職場の秩序と守るための、境界線の強化なのです。


感情的な言動への指導:職場での「不満の伝え方」

全体への周知と並行して不可欠なのが、要求が強く、感情でコントロールしようとするスタッフへの個別対応です。ここでも伝えるべきことは同じです。

「シフト希望は配慮である」という前提を個別に改めて通告し、指導します。

そして、「不満の表明の仕方」についても明確に指導するがあります。

職場に対して不満に思うことはあると思いますが、不満を伝える時は、感情的にならずに普通に話をしてください。

不機嫌な態度で仕事をしたり、感情的になって声を荒げたりするような行為は服務規律違反になります。不適切な行為となりますので、今後は改めてください。

対人援助の現場は、どうしてもスタッフが感情的になりやすい傾向があります。しかし、大前提として「不満」は感情をぶつけなくても、言葉で冷静に伝えることができます。

不機嫌になったり、声を荒げたりする「暴力的な不満の表明」を許容してはいけません。

詳しくは以下のブログ記事を参考にしてください。


必要なのは、職場としての「覚悟」

なるほど…。対応方法と理屈は理解できました。

ただ、うちは人手不足でして…。こっちの対応が不満で辞められてしまったら、それこそシフトが組めなくなります。そう考えると、なかなか対応が難しくて悩みますね。

介護や福祉の現場は日常的に人手不足です。不安になる気持ちはごもっともと思います。

辞められたら困るから要求に従い、注意もせず、顔色をうかがい続ける。とにかく摩擦を避けて穏便に済ませる。

このような対応に偏る職場は少なくありません。

しかし、そのような対応を続けた結果、職場の秩序が崩壊していく。

「まともな感覚を持ったスタッフ」がどんどん辞めていき、感情的で暴力的な人だけが残る。

これが現場のリアルです。

「人間関係を穏便に済ませること」を優先するのか。 それとも、「職場の秩序」を保つのか。

そこには、職場としての「覚悟」が求められます。


職場をどうしたいのか、あなた一人で抱え込む必要はありません。

経営層や他の管理職とよく話し合い、「職場としてどうありたいのか」を固めていきましょう。

「ケースバイケース」という言葉は、一見柔軟に対応しているように見えて、実はその場の「不機嫌な人」や「自己主張が強い人」に屈しているだけの免罪符になりがちです。

あなた自身と職場を守るために。できることから、ぜひ取り組んでみてください。

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AIDERS 代表 山﨑正徳

公認心理師・精神保健福祉士。精神科・EAP機関・カウンセリングルーム・学校などで、2万件以上の相談を受けてきたカウンセラー。自身の燃え尽き・離職等の経験から、対人援助職のメンタルヘルスを向上させることを目的にAIDERS(エイダーズ)を開業。これまで、延べ4000人以上の対人援助職に対してバウンダリーやクレーマー対応などをテーマに講演を行っている。

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